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マスコミの報道は疑ってかかれ! 「ドキュメント真贋」 落合莞爾著 を読む [落合莞爾]

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

2011年に最初に紹介する本は、私が勝手に私淑している落合莞爾氏の「ドキュメント 真贋」です。この本は、1993年出版の古い本ですが、是非多くの人に読んでもらいたい本です。

ドキュメント 真贋―大阪府岸和田市制施行七十周年記念「東洋の官窯陶磁器展」贋作騒動の真相sshingan.JPG落合氏というと佐伯祐三の真贋事件の方が有名になっていますが、私はこちらの真贋事件の方が重要だと思っています。この本の副題は”大阪府岸和田市制施行七十周年記念「東洋の官窯陶磁器展」贋作騒動の真相”というもので、私は本屋で最初に見た時は、なんだかローカルな展示会の話だな...と興味をそそられませんでした。
(岸和田の方、申し訳ありません)

【展示品:大明嘉靖年製銘・金襴手・八角面取り・尊式瓶】gosaikinran3.JPG
平成4年10 月に岸和田市の依頼で落合氏が理事を務める紀州文化振興会が所蔵している中国、李朝の陶磁器の展覧会が開催されました。この展覧会に対して、読売新聞、朝日放送が「展示品が贋作である」との報道を行いました。それらの経緯を贋作扱いされた側の視点から書かれているのがこの本です。

落合氏は、この本によると和歌山県出身で東大法学部を卒業後、住友軽金属に就職し、在職中に経済企画庁に出向した後、退職して野村証券に転職 します。その後、独立して落合事務所を立ち上げて、大企業の役員のコンサルタントなどを行っていたようです。そして、故郷である和歌山で土地の素封家の知人を通して紀州徳川家の所蔵品であった、李朝や中国陶磁器を買い取り、自ら理事を務める紀州文化振興会の所管としました。
問題となった展覧会は、岸和田市から紀州文化振興会に依頼があり、陶磁器を貸し出して開催されたそうです。

展覧会は平成4年の10月24日~11月15日まで開催されましたが、11月9日の読売新聞の夕刊の社会面のトップにとんでもない記事が載りました。
「秀作古陶磁展 看板に偽り」
明・李朝作品 摸作の疑い
学者クレーム 市は鑑定拒否
大阪府岸和田市が市制七十周年を記念、市立岸和田城資料館で開催中の「東洋の官窯陶磁展」に展示された三十四点が、いずれも表題にある中国元・明代や李氏朝鮮などの秀作でなく、後世に作られた摸作である疑いが強く、質も低いとの指摘が大学や博物館の研究者らの専門家から相次ぎ、東洋美術史を研究している奈良県内の短大教授(61)が九日までに、市側に再鑑定などを申し入れた。
これに対し、久禮信夫教育長は、第三者の専門機関などによる展示品の評価を経ずに開催したことを認めたものの、申し入れは拒否。出展団体側は「展示の中心は清朝の乾隆帝らの秘蔵品や、江戸期の通信使からの贈品で、質も高い」としている。(中略)
問題点を指摘した短大教授に対し、久禮教育長は「真贋(しんがん)については、紀州文化振興会主宰者を通じて『間違いない』という北京大学教授の話を聞き、図録の解説まで書いてもらっていたので、第三者の鑑定と解釈した」と説明。
また、紀州文化振興会主宰者は「北京大学教授など国内外の研究者に鑑定してもらっており、本物に間違いない。陶磁史上、これまで知られていないものなので、色々言われるかも知れないが、疑義があるなら、堂々と議論したい」と反論している。
これを読んだ普通の読者であれば、「あれはやっぱり贋作なんだ...」と信じるでしょう。しかし、本書を読むと市に再鑑定を申し入れた短大教授というのが、古陶磁愛好家の心理学が専門の教授であることが分かります。これをあたかも古陶磁の専門家がクレーム付けたように読めるように書いています。

【展示品:釉裏紅青・九竜波涛文・共蓋・大酒会壷】kuryugosou1.JPG
また、上記の記事を読むと通常の展覧会では、「第三者の専門機関などによる展示品の評価」を行っているように読めますが、それはまったく実情と異なります。通常の展示会では、その道の専門家に展示品の鑑定を含めた選定を依頼するのが普通で、いちいち第三者の専門機関などに依頼はしません。(だいいち、それに頼める第三者機関ってどこでしょう?)
本展示会の展示品は、国内では新屋隆夫(古陶磁研究家:奥田誠一門下)、中国では北京大学の楊根教授に鑑定を依頼していましたので、一般的には何の問題もないはずです。
さらに11月10日の夜、久米宏がキャスターをつとめるテレビ朝日の「ニュース・ステーション」でとんでもない内容が報じられます。

テロップ:岸和田市主催 ニセモノ陶磁器展?

久米宏:こんばんは。大阪の岸和田市が世界的なコレクションと銘打って、中国と朝鮮の宮廷で造られたという陶磁器の展覧会を今開いています。しかし、展示品のなかには徳川家の葵の御紋が入った朝鮮の壷など、本物とはとても信じられないような作品が沢山あることが分かって、今日韓国の国立中央博物館も贋物だと断定しました。一方岸和田市側はあくまでも本物と信じると、専門家による鑑定を拒否。展覧会をこのまま予定通り続けるつもりです。壷をめぐる国際的な真贋論争のいきさつを大阪ABC放送の吉田健司がお伝えします。(中略)
ナレーター:韓国の第一級の専門家が贋物と断定したにも関わらず、岸和田市は贋物かどうかの再鑑定は専門家にすでに見てもらっているので必要ないと拒否しています。
久米宏:取材した大阪の吉田さん。この葵のご紋のやきもの以外にもオカシナものはあるんですか?(中略)
吉田健司:はい。じつはこれは東洋の陶磁器の基準作品を展示しました大阪中之島の東洋陶磁美術館のカタログなんですけれども、そのなかに掲載されておりますこの作品、これのそっくりさんが岸和田市の展覧会にも並んでいます。(中略)
吉田健司:エー、あの実は、韓国国立中央博物館の専門家が近いうちに来日して調査をしたいと言っておられますので、エーひょっとしましてこの問題は国境を越えたエー、スキャンダルに発展するかも知れないという感じがいたします。

これを読んだだけで、久米宏がわけ知り顔で語っているのが想像できますね。「韓国の国立中央博物館も贋物だと断定しました」というのは、韓国の専門家に図録のファックスを見せて見解を求めたもので、「記録がない、見たことがない、実物を見なければ確実なことはいえない」と言ったことを曲解して報じたものです。だいたい、美術品の真贋の意見を聞くのにファックスを見せて意見を聞くこと自体あり得ないことです。ですから、専門家も「実物をみなければ確実なことは言えない」と至極当たり前のことを述べただけです。それを、贋物と断定しましたと報道したニュース・ステーションの報道姿勢には悪意すら感じます。また、韓国の専門家にファックスの画像で鑑定を依頼するということ自体に、この番組に美術品の報道を行う資質があるのかどうか疑問を持たざるを得ません。

【金彩染付・葵紋・四君子文・大壺】rityou.JPG
しかも、韓国側の専門家が来日して調査するというのも、たまたま別の用事で来日するので、見てみたいということを捻じ曲げて報道していたそうです。そして、本書によると、ニュース・ステーションの報道に関して、取材の過程で紀州文化振興会に一度も取材はなかったそうです。このような一方的な情報のみで大々的な贋作報道を行うとは報道機関としての見識を疑わざるを得ません。

このように、大新聞である読売新聞とテレビ朝日の人気番組であるニュース・ステーションで贋作と断定されたことに関して、落合氏を含めた紀州文化振興会側はいろいろな手を使って報道機関に説明を行いますが、一度贋作と報道されたハードルは高く、結局覆すことができなかったようです。

落合氏は、特に贋作と名指しのあった李朝の作品を数個、科学鑑定を行います。P&Sセンターという鑑定機関に依頼して熱ルミネサンス測定を行い、100年以上、300年以上経過しており最近の作ではないという鑑定をもらいましたが、その結果を報道機関に説明しても、贋作の汚名は晴らせない状況が続いているようです。このような事実を見ると、美術品において科学鑑定って意味があるのだろうか?と疑問を持たざるを得ません。

ニュース・ステーションは所沢のダイオキシンの風評被害で問題となりましたが、それ以前にもこのように一方的な情報による垂れ流し報道を行い風評被害を与えていたとは知りませんでした。私はこの本を読んで、マスコミ報道は、まずは疑うようになりました。特に、マスコミによる贋作報道に関しては...。(佐伯祐三、佐野乾山などなど...)

suubi.JPG落合氏の主宰する紀州文化振興会所管の中国陶磁器、李朝御窯の名品は、「紀州文化振興会所管 陶磁図鑑」(東興書院)に詳しく載っています。興味のある方は、是非一度ご覧になってみてください。中国陶磁、李朝のどちらも紀州徳川家伝来のものです。落合氏はこの紀州徳川家伝来の中国陶磁器は、大正末~昭和の初期に張作霖から伝来した、中国皇帝が所有していた名品と考えています。

信じるか信じないか、それはあなた次第です。(^^)
この落合氏の考察は現在も続けられており、私は十分に可能性がある仮説だと考えています。

さて、以上述べたように紀州徳川家伝来の中国陶磁、李朝の名品に関する贋作事件、しかも読売新聞、テレビ朝日が大々的に報道した事件です。でもみなさんは聞いたことないですよね?これってオカシイと思いませんか? 最近よく出されている贋作事件を扱った本などでも、どうでも良いような事件は書かれているのに、何故かこの重要な岸和田事件に関しては書かれていないのです。これもこの事件の不思議なところで、まるでこの贋作事件を無かったことにしようとする力が働いているようです。

美術品の真贋事件に興味を持たれた方は、是非この「ドキュメント真贋」を読まれることをお勧めします。

【落合先生の本に関してはこちらもどうぞ】
・「吉薗周蔵手記」が暴く日本の極秘事項」 落合莞爾著 を読む
・落合秘史はここから始まった! 『天才画家「佐伯祐三」真贋事件の真実』 落合莞爾著 を読む
・「天皇とワンワールド」 京都皇統の解禁秘史 落合莞爾著 を読む
・「欧州王家となった南朝皇統」 落合莞爾著 を読む
・現皇室は南朝の末裔だ「南北朝こそ日本の機密」 落合莞爾著 を読む
・「日本教の聖者・西郷隆盛と天皇制社会主義」 - 版籍奉還から満鮮経略への道 落合莞爾著 を読む
・「明治天皇“すり替え”説の真相: 近代史最大の謎にして、最大の禁忌」 落合莞爾、斎藤充功著を読む
・孝明天皇、大室天皇の真実! 明治維新の極秘計画 ――落合秘史Ⅰ 落合莞爾著 を読む
・ユダヤとは何か? 落合先生の最新刊、 金融ワンワールド 落合莞爾著を読む
・甘粕正彦もユダヤ? 上原勇作の特務、吉薗周蔵の手記にみるユダヤ 落合莞爾著
・「と学会」の本としてどうなの? トンデモ ニセ天皇の世界 と学会 原田実著
・乾隆帝の秘宝と『奉天古陶磁図経』の研究 落合莞爾著 を読む
・マスコミの報道は疑ってかかれ! 「ドキュメント真贋」 落合莞爾著 を読む

真贋事件に興味のある方は、
・藤田玲司と三田村館長が認めた「佐野乾山」、ギャラリーフェイク 006 「タブーの佐野乾山」
・夭折の画家 佐伯祐三と妻・米子

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Chinese ceramics,Qing Dynasty Treasures

天才画家「佐伯祐三」真贋事件の真実



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コメント 9

Simple

TBM さん

いつもNice! ありがとうございます。
年末のDynamite!はちょっと残念でしたね。
by Simple (2011-01-03 11:54) 

Simple

110 さん

Nice!ありがとうございます。
ブログの浮世絵の話、興味深く読ませて頂いています。
by Simple (2011-01-03 12:05) 

Simple

ChinchikoPapa さん

Nice!ありがとうございます。
岸田劉生の話、興味深いですね。
by Simple (2011-01-03 12:08) 

Simple

RONRON さん

いつもNice!ありがとうございます。
「読書のすすめ」は知りませんでした。
おもしろそうですね。機会があれば行ってみたいです。
by Simple (2011-01-04 09:30) 

Simple

ぼんぼちぼちぼち さん

Nice!ありがとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
by Simple (2011-01-04 09:40) 

Simple

mo_co さん

Nice!ありがとうございます。
私も静電気がたまりやすいのですが、昨日TVで車の給油の時に火花がでてガソリンに火が着く映像をやっていました。お互いに気をつけましょうね。
by Simple (2011-01-04 09:45) 

Simple

rezare さん

Nice!ありがとうございます。
昨年読まれた本では、武田教授の本が被ってますね。
武田教授も最近はTVに出すぎですが...。
今後ともよろしくお願いします。
by Simple (2011-01-04 09:58) 

落合莞爾

岸和田出展品のうち中国陶磁器二関する来歴が完全に判明いたしましたので、ご報告します。あれは大正9年に吉薗周蔵が奉天で見たもので、その時に作成した資料を今回、「吉薗周蔵大正9年作成『奉天古陶磁圖經』」なる資料集として作成いたしました。
次に、これが大正13年に日本に渡来して紀州徳川家に入る経緯と、その一部分が流出して世界各地の美術館二入った経緯と品物を解説した拙著「乾隆帝の秘宝と『奉天古陶磁圖經』の研究」も完成いたしました。
ご希望の方には、資料集20000円、解説書15000円、セット特価25000円で配布を始めております。
お問い合わせは,ファックス073ー428-3050まで。
または、E-mail:info@kleio.ne.jp
URL http://kisyu-bunka.org
by 落合莞爾 (2011-07-16 16:04) 

Simple

落合先生

コメントありがとうございます。
ご本人からコメントを頂けるとは感激です。
また、研究書のご紹介ありがとうございます。
ただ、http://kisyu-bunka.org は見られないようですが...。

今後ともよろしくお願いします。
by Simple (2011-07-17 17:53) 

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