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『連合赤軍 「あさま山荘」事件』 佐々淳行著 [社会]


連合赤軍「あさま山荘」事件―実戦「危機管理」 (文春文庫)連合赤軍「あさま山荘」事件
佐々淳行氏と言えば、学生運動が盛んであった70年代、警視庁の警備のトップとして数々の難事件を解決してきたことで有名です。その中でも最も国民の注目を集めたのが、軽井沢でおきた「あさま山荘」事件です。この事件は、1972年2月19日に軽井沢の別荘地にある「あさま山荘」に連合赤軍のメンバー5人が管理人の妻を人質としてライフル、散弾銃、パイプ爆弾などをもって立てこもった事件です。
その当時、佐々氏はこの事件担当ではありませんでしたが、警察庁長官であった後藤田正晴氏から、事件を指揮するように指示されました。
その時の後藤田長官の指示内容は以下の通りです。
1.人質牟田泰子は必ず救出せよ。これが本警備の最高目的である。
2.犯人は全員生け捕りにせよ。射殺すると殉教者となり今後も尾をひく。国が必ず公正な裁判により処罰するから殺すな。
3.身代わり人質交換の要求には応じない。とくに警察官の身代わりはたとえ本人が志願しても認めない。殺される恐れあり。
4.火器、とくに高性能ライフルの使用は警察庁許可事項とする。
5.報道関係と良好な関係を保つように努めよ。
6.警察官に犠牲者を出さないように慎重に。
1,000発以上の銃弾や爆弾を相手に丸腰で事件解決しろ、というのですから佐々氏などの警備を行う側には非常に厳しい条件だと思います。しかし、この事件の後の影響まで考慮して、強い指示を与えた後藤田長官の判断とリーダーシップは素晴らしいと思います。

突入せよ!「あさま山荘」事件 2枚組DTS特別版<初回限定版> [DVD]
この佐々さんの本は、原田眞人監督が『突入せよ! あさま山荘』で映画化しています。佐々氏の原作にほぼ忠実に描かれており、突入シーンもかなりの迫力で、何回も見てしまいました。映画では、2時間程度でまとめる必要があるため、事件当時の社会状況や背景などが描かれていないため、佐々氏の本を読んでから、この映画を見るのが良いと思います。

ところが、この映画に対して好意的でないコメントも多いようです。まあ人それぞれ見方はあると思いますが、気になったのは佐々氏に対する批判が非常に多い事です。その中で多いのが、『佐々の自慢話の映画』という視点での批判でした。
この視点は、佐々氏の著書に関してもかなり多く見られます。その裏には、どうも佐々氏に対する嫉妬があるように感じます。私は佐々氏の考え方、行動力を非常に評価していますし人間として尊敬できる人だと思います。その立場から言うと佐々氏の本を『自慢話』として捕らえる人は氏の本の大事な所を見落としているとしか思えません。

「あさま山荘事件」当時、佐々氏は警備局付警務局監察官という職名でした。これは佐々氏が述べていますが、「無任所課長」だそうです。つまり、警察庁の通常の課長であれば、個室を与えられて多くの部下を持つのが一般的ですが、佐々氏の場合、部下無しで事件が起こると派遣幕僚として西から東まで派遣されて事件解決を任務とするトラブルシューターということです。
これは、かなりつらい立場だと思います。自分の手足となる部下がいない訳ですから...。役職だけ上げられて、部下も居なくて難しい仕事ばかり回ってくる。はたから見ると「いいように使われている」としか思えません。
「あさま山荘事件」の時も後藤田長官に「野中君(長野県警察本部長)はなあ、こういう警備やったことないでなあ、君、ちょっと軽井沢に行って指揮して来いや」と言われて行った訳ですが、自分の身になって考えればその大変さは分かるはずです。
通常の会社で考えてみましょう、社長(後藤田長官)から本社の課長である自分(佐々氏)に、「長野工場で重大な問題が発生している。長野の工場長はこう言った事に不慣れだから、君ちょっと行って指揮してきなさい」と言われたようなものです。課長である自分が、工場長を指揮なんかしたらとんでも無いことになる...。しかも、うまく行ったとしても「あいつは、関係ないのに自分からしゃしゃり出て行った」なんて言われるに決まっている。私だったら絶対に嫌です。(笑)
佐々氏もその辺の気持ちを正直に書いています。
でもまた、なぜ私が特命なんだ。先輩の正規の警備局課長が何人もいるのに編成された指揮幕僚団のメンバーは超変則。この人質救出作戦は誰が見てもまず成功の見込みは少ない難事件だ。となると初めから失敗を見越してキチンとした正規の職制にある主流派は温存しておいて、私たちに火中の栗を拾わせるということなのか。つまり私たちはエクスペンダブル=使い捨ての駒なのだろうか。本当に私の指揮能力を評価してくれての任務附与なのだろうか。
そんなかすかな疎外感を覚えながら私は長官室を出て暮れなずむ警察庁五階の暗い廊下を洗面所に向かった。-連合赤軍「あさま山荘」事件 より
「佐々の言っている事は違う。現場はあんなもんじゃなかった」というような趣旨の意見も多くあるようです。私の飲み友達に警察の公安関係の人がいますが、その人も「あさま山荘事件」に参加した大先輩がそう言っていたと教えてくれました。それはそれで当然です。私の会社でも製品を作りあげる場合、作業者には作業者からみたドラマがあり、リーダー、課長、部長それぞれに自分だけのドラマがあります。各自、自分達がやったんだという気概を持って仕事をしているのですから、これはこれで良い事だと思いますが、時々「あいつは何もやっていない。あれは俺がやったんだ!」と飲み会で騒ぐ人がいて困ります。(笑)
「あさま山荘事件」の場合も現場の機動隊員達は、自分達の仕事の範囲でしか事件を知らない訳で、佐々氏が後藤田長官から直接指揮の指示をもらった事なんか知らないんですから...。
また、この「あさま山荘事件」は、人気番組である『プロジェクトX』でも取り上げられました。この時は、日の当たらない人達にスポットを当てるという番組の性格上しょうがないのでしょうが、佐々氏の役割を小さく描いていました。しかし野中長野県警本部長を必要以上に持ち上げるのはいかがなものでしょうか?
野中はこの事件解決の全責任を負う、唯一の総指揮官だったのである
(警察庁長官の)後藤田の意向はあくまでサジェスチョンでしかない。警備本部の全責任は、野中庸、ただ一人の肩にかかっている
普通の会社以上に階級制度の厳しい警察にあって警察庁長官の意向が「サジェスチョンでしかない」という事があり得るのでしょうか? 普通の会社で重大問題が発生した場合に工場長が社長の意向を、「サジェスチョンでしかない」と考えて行動できるでしょうか? そんな事をしたら首が飛ぶのではないでしょうか。
「プロジェクトX」を製作しているNHKはそういう会社なんでしょうか? 外からながめる限り、そうであるとは全然思えませんが...。(笑)

また、映画では宇田川警視役で宇崎竜童がマイホームパパのいい味出してました。ちょっと前だったら、「あんな警察官いないよ!」と怒っていた所ですが、最近、前出の公安関係の方と飲むようになって、考え方が変わりました。警察の人たちも自分の妻や子供達を大事にする普通のパパなんです。銃器使用を制限された状況で、ライフルを撃ってくる相手に突入するのなんて誰もやりたくありません。

70年代当時は、学生運動が激しく、けっして住みよい社会では無かったと思いますが、現在の大人しくなってしまった日本よりは主義主張のぶつかり合いがあってよかったように思います。(武力行使はゴメンですが・・・)

【あさま山荘関連記事】
あさま山荘に行ってきました! こんな狭い場所で銃撃戦をやっていたの?
http://simple-art-book.blog.so-net.ne.jp/2011-08-06-2

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彼らが日本を滅ぼすわが記者会見のノウハウ―スキャンダル克服の秘訣「危機管理・記者会見」のノウハウ―東日本大震災・政変・スキャンダルをいかに乗り越えるか (文春文庫)重大事件に学ぶ「危機管理」平時の指揮官有事の指揮官―あなたは部下に見られている (文春文庫)わが「軍師」論―後藤田正晴から鳩山由紀夫ブレーンまで (文春文庫)ザ・ハイジャック―日本赤軍とのわが「七年戦争」菊の御紋章と火炎ビン―「ひめゆりの塔」「伊勢神宮」が燃えた「昭和50年」謎の独裁者・金正日―テポドン・諜報・テロ・拉致 (文春文庫)わが上司 後藤田正晴―決断するペシミスト (文春文庫)東大落城―安田講堂攻防七十二時間 (文春文庫)


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Simple

TBM さん

Nice! ありがとうございます。
今日は、レッズも勝ちました!

by Simple (2011-07-24 01:02) 

Simple

tsworking さん

Nice! ありがとうございます。
私も毎日歩くようにしています。
ここ数日は涼しくていいですね!

by Simple (2011-07-24 23:29) 

Simple

mo_co さん

Nice! ありがとうございます。
私も子供の頃はお泊りが大好きでした。
by Simple (2011-07-26 00:13) 

ヴィトゲンシュタイン

はじめまして。
ボクも当時(10年くらい前?)原作読んで、ロードショーに行ったクチですので、懐かしい気持ちで記事を拝見しました。
確かに Simple さんの言われるとおり、原作を読んでからじゃないと、映画がダイジェスト的なので難しいかな?特に当時を知らない世代の日本人にとっては・・。
そういう意味でも原作はとても良かったですね。また読み返したくなりましたた。
そうそうプロジェクトXでもやっていましたね。あれも興味深く見た記憶があります。


by ヴィトゲンシュタイン (2011-09-14 15:38) 

Simple

ヴィトゲンシュタイン さん

Nice & コメント ありがとうございます。
私はDVDでしか見ていません。
大画面で見たかったと思う映画ですよね。
今後ともよろしくお願いします。
by Simple (2011-09-14 22:16) 

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